第25章 悪巧
「あの、ありがとう…ございます。」
「いや。―――――何か、飲むかい?落ち着くだろう。」
「―――――はい。」
私が歩を進めると、ナナが制する。
「……私が!手……お怪我されているのに……。」
「ああそうだった。では、頼むよ。」
ナナが淹れたコーヒーを並べ、ソファに腰かける。壊れた窓から、生ぬるい夜風が舞い込んでいる。
「それで――――――何があった?話せるか?」
「はい――――――。」
ナナは一般兵のダン・シャルロスに言われもないことで迫られたこと、逃げようとしたが誰かに鍵をかけられたことを、ゆっくりと口にした。
「なるほど。協力者に心当たりは?」
「いえ………。」
「ダンが来るまで、君は一人だったのか?」
「……いえ、医療班の……エミリーと一緒でした。」
「………そうか。エミリーが協力者の可能性は?」
「ない、と………思いたい、のですが………。」
その先を口ごもる。私には言えないことなのだろうか。