第25章 悪巧
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――――――彼女は私が贈った言葉とあの翼の意味をどう受け取っただろうか。次に二人きりになった時は、それを聞いてみたい。
奪還作戦の資料を書き終え、一段落したところでついついナナの事を考えてしまう。ふふ、と零れる笑みを押さえながら夕食に向かおうと椅子から立ち上がった。
その時――――――――
ガシャン!!
背中越しにけたたましい、ガラスの破損する音が聞こえた。
目をやると、そこには夜の暗い闇の中、割れたガラスと白銀の髪が風に煽られて揺れている。
「――――――ナナ?!?!」
私は慌てて駆け寄った。ナナはまるで空から降って来てそこにしがみついたように、窓辺の僅か数十センチのへりにつかまって今にも落ちそうだ。
窓は外向きにしか開けられない。
私は窓枠から窓を力づくでもぎ取り、部屋の中へ投げ捨てた。
ナナの腕を掴み無我夢中で引き上げながらも屋上に目をやると、そこには知っている顔の男が驚いた顔でこちらを見下ろしていた。
私に気付いた奴は、すぐにその姿を消した。
「……エ、ルヴィン団長………すみません……。助かりました……。」
「……どうした、何があったんだ。」
ナナの身体には引き上げた時にガラスの破片でついた小さな擦り傷と切り傷、胸元を開けられたボタンから白い肌に浮かぶいくつもの赤い所有印が目に入る。