第25章 悪巧
「逃げられないの、分かってるでしょ?演出だけの逃げるフリはやめようよ、ナナちゃん。」
ダンさんはくくっと笑う。彼は大人で、紳士的なふるまいと優しい物腰で女性兵士も噂をするほどだ。彼にとって、こんなことはただの遊びの延長なんだ。
だけど、内側から鍵をかけた―――――協力者がいる以上、私を貶める事を目的にしていると考えるのが妥当だ。
おそらく説得はできない。力でも敵わない。………逃げるしか、ない。
「好きでしょ?気持ちよくなるの。俺がいっぱいイかせてあげるよ?」
「あいにく――――――あなたじゃどうやっても無理。全然感じない。」
精一杯の虚勢で不敵に笑って見せる。舐められて、たまるか。
そう、リヴァイさんなら――――――
腕に囲われたあの時点で、体温が上がり呼吸は早くなり、身体の芯が疼く。全ての思考が停止し、彼しか見えなくなる。
本能が、身体の全てがリヴァイさんを欲する。
「………いいねぇ。堕としがいがありそうで。」
プライドを傷つけられたのか、ダンさんの目に僅かな苛立ちと欲情が灯った。その大きな手が私に伸びて来たとき、私は塀を乗り越えて跳んだ。
「なっ……――――――――!」
彼の目には、私が屋上から飛び降りたように映ったはずだ。まぁ、実際その通りなのだけど。