第25章 悪巧
私はその夜にエミリーを連れて兵舎の屋上に出た。
私がいつもハンジさんに話を聞いてもらっているこの場所は、星がよく見えて好きだ。
少しひんやりとしたその場所に座り、となりをぽんぽんと叩いてエミリーを誘う。エミリーは私の誘った通りに隣に腰を下ろした。
「もうすっかり、夜でも寒くなくなったね。」
「はい。」
「……エミリーは、家族はいるの?」
「……はい。王都で……小さな花屋をやっています。」
「兄弟は?」
「弟が一人。歳が離れているので、まだ8歳なんです。……生意気ですが、可愛いです。」
ようやくエミリーがふふ、と少し微笑んだ。
「ナナさんは………。」
「ん?」
「リヴァイ兵長と、お付き合いをされているんですよね?」
「うーん……お付き合いというのが私はよくわからないんだけど………私はリヴァイ兵士長を愛していて、うん……彼にも、愛されている、かな。」
私は自分の口にしたことがとても恥ずかしくなって、膝を抱えて少し顔を隠した。
「素敵……ですね……。」
エミリーははぁっとため息をついて、夜空を見上げた。
「……エミリーも、好きな人が、いるの?」
私の問に、エミリーの顔が熱を持った。