第25章 悪巧
翌日発表されたウォール・マリア奪還作戦の班編成の内容を見て、班長に任命されて喜んでいる人、愕然とする人、反応は様々だった。私は自分の拳の中が、じわりと汗ばむのを感じた。
「―――――ナナさん」
「……エミリー。」
「まさか、ナナさんが編成されるなんて……思ってもみませんでした。」
「……もともと、ずっと私は壁外調査に行くことを望んでいたからね。怖い、けど……やっと、この機を掴めた……。」
「で、でも……ナナさんは討伐のための訓練を受けていないのに……!無謀です……!や、やめましょうよ……!今からでも、団長に……!」
私よりもガクガクと震えながら、その細い指先で私の手を握る。それをたしなめるように、柔らかく笑って見せる。
「いいの。ありがとう。私が行くことで、一人でも命が助かるように―――――頑張ってくるから。待ってて。」
「で、でもっ………今回は特に……いつもの壁外調査とは違う……!」
エミリーのこの怯えようはなんだろうか。
いつも私の後をついて回って、姉のように慕ってくれているのはわかっている。だから、失うのが怖いのだろうか。
「ね、エミリー。ゆっくりお互いの事を話したこともないし、良かったら少し、私と話をしない?」
「……はい……。」