第3章 岐路
母に再会するまでは、一人で紅茶を飲むこの時間に思い出すのは、いつも母のことだった。
でも、母に再会し、母の全てを受け入れることができてからは、この時間に思い出すのは決まって彼の事だ。
「リヴァイさん………元気かな………。」
信じられないでしょ?私に結婚の話が出ているんだよ。
大きくなったよ。
……もう、どれだけ会っていないだろう。
もう、私の事なんて忘れちゃったかな。
ワーナーさんも、どうしているかな。
紅茶、きっとなくなっちゃってる。
また持って行きたいよ………。
そんな事をぐるぐる考えながら、カップを置いてベッドに横たわる。そのまま私は眠りに落ちた。
それから一週間後、私のシガンシナ区行きは許された。
ただし1年のみという区切り付きで、その他にもいくつかの条件は飲まざるを得なかったけれど。
オーウェンズ家の娘が自ら過酷な医療現場に訪れる。私のことをなるべく貴族や富豪に嫁がせたい父としても、これ以上ない話題性だということで、ロイがうまく父を説得してくれた。
シガンシナ区に発つ朝、ハルは泣きながらも、背中を押してくれた。ロイもハルもいない場所に住むのは、初めての経験だった。不安と期待に胸を膨らませ、私はイェーガー先生の元へ向かった。