第24章 誕生日
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みんなが散り散りになって、同室のリンファさんも出て行った。今は部屋にナナさんだけだ。
俺はこの機を逃すまいと、開いたままの扉から部屋の中のナナさんの様子を伺った。
隠していた、小さなプレゼントの箱を手に握りしめて。
部屋の中のナナさんはベッドに腰かけ、白銀のふわふわした髪に花のかんむりをつけて、まるで女神……そう、まちがいなく女神だ。
胸の高鳴りを押さえてしばらくナナさんの様子を見ていると、胸に抱えたさっきの下手くそなケーキの絵を広げて、満面の笑みで嬉しそうに眺めた。
きっと、描いた人物のことを想像しているんだ。
………その表情は、見たこともないほど優しくて、その白い頬を少し赤く染めている。その表情を見れば、嫌でも分かってしまう。ナナさんは、この絵を描いた人に、恋をしている。
ナナさんは大事そうにまた絵を抱きしめて、満面の笑みで微笑んだ。
なんて、綺麗なんだ。
見惚れているうちに手からプレゼントの小箱がこぼれ落ち、こと、と物音を立てた。この想いを伝えることができないまま、俺はその場を去った。
ちくしょう、でもあんな顔を見たら、何も言えない。
俺が入る余地なんて、まるでないみたいだ。
相手は誰だよ。
グンタはリヴァイ兵長だって言ってたな……いくら強いと言っても、あんな怖くて無愛想な人を本当にナナさんは好きになるんだろうか………もしかしたらリヴァイ兵長がナナさんを狙ってるだけで、ナナさんは団長みたいな……大人で包容力のある別の人が好きなんじゃないか。
……そうであればいいのに。
兵士としても、男としても、どうやったって敵わない人のものであればいいのに。