第24章 誕生日
「……あのケーキの絵は、誰が描いてくれたの?」
そのケーキは、形が歪で、ありったけのフルーツを乗せていて、今にも崩れそうな見た目をしている。
「………ヘッタクソだな!」
「ある意味芸術的だな。」
「ケーキなの?これ。」
「あ、あの、いや!俺はすっげぇ素敵な絵だと、思うけどな!!!」
「だよな?!そう、あたしもそう思うよサッシュ!!」
「絵心があるなしで言ったら、ないな!うん、潔い下手くそさが私はいいと思う!」
口々に罵られるその絵を見て、私は少し温かい気持ちになった。
「……私は、すごく好きだな。―――――きっと、私の好きなものを想像しながら、喜ばせようとしながら描いてくれたから……ふふっ………こんなに豪華になったのかな、って。―――――すごく、嬉しい。」
私は暖かい気持ちで絵をなぞった。
不器用な優しさと、不器用な愛情をいっぱいに描いているその絵は、なんだか誰かに似ている。
サッシュさんとリンファが、目を合わせて少し笑った気がした。
「この絵は私が貰ってもいいのかな?」
「もちろんだ。あんたの為に描いてくれたものなんだから。」
私は窓からその絵をそっと外して、胸に抱いた。
「女神すぎるだろ…………。」
「――――――ナナは本当にいい女だな。」
「――――――敵わねぇな、やっぱ………。」
私の抱く絵に鼻を近づけたミケさんが、鼻を鳴らしてから呟いた。そこに被さるようにサッシュさんがなにかを言った気がしたが、私には聞こえなかった。