第23章 扇揺 ※
「………そうだな。それは、君も同じだろう?」
「…………。」
「君は出さないよ。これも決定事項だ。」
「………っ………行きたいです………。」
「認めない。」
「エルヴィン団長と、リヴァイ兵士長と、同じ世界を――――私も見たい……!それが、どんな残酷な世界であっても―――。」
拳を強く握って悔しさをかみしめる。また、私はこの壁の中で待つのか。
愛しい彼らが死ぬかもしれない恐怖にさいなまれながら。
「……君を、失いたくない。」
「それは、団長としての言葉ですか?……それとも、私情ですか。」
エルヴィン団長がピクリと眉を動かした。
とんでもなく生意気で思い上がった口をきいたということは、分かっている。
「……言うね。」
どこか喜々とした笑みを向けられ、戸惑う。
「―――――っ……申し訳ありません。今のは思い上がりですので忘れてください。団長としてのご判断に、私は従う……までです………。」
「――――そうだな。先ほどのは団長としての言葉だよ。ただ、私が私情を交えるように見えているのならそれは、君のせいだな。」
エルヴィン団長は、まるでそれを自覚しろ、といわんばかりに言葉や態度で示してくる。こんなに甘く強烈な引力を放つ人から好意を向けられたことはない。
そつなくかわすほどの技量も余裕もなければ、経験も度胸も私には足りない。
「……私は、なにも――――――」
「なにも?自覚がないか?本当に?」
咄嗟に目を逸らす。
心臓が早鐘を打つ。
エルヴィン団長が椅子から立ち上がり、私の方へ歩み寄る。
ゆっくり目線を上げると、蒼い瞳が私を映している。捕食者に睨み付けられた小鹿のように、身動きがとれない。