第22章 朋友
「訓練兵として入団してからも、周りが全部怖くて………誰も信用できなくて、私は誰とも話す事ができずに、嫌がらせの恰好の的だったよ。女であることを呪った………。その時も数名の男に暴行されそうになってたところをサッシュが助けてくれて、言ったんだ。『虐げられることに慣れるな。強くなれ。それでも駄目なら言え、俺が守ってやる。』って。」
「…………。」
「あいつは、粗暴だし、馬鹿だし、惚れっぽいし………どうしようもないやつだけど、私にとっては……唯一、信じられる男なんだ。」
「……うん。」
「あいつがあたしを好きになるはずないことも知ってるし、どうこうなりたいなんて大それたこと、思ってない。ただ……隣にいれたら、いい………。」
私はリンファの手から紅をとった。
「………ね、つけさせて、くれる?」
「…………。」
リンファの頬の涙を指で拭って、静かに頷いたリンファの顎に手を添えた。
紅をほんの少し小指にとって、その柔らかな唇に乗せる。
まるで生まれ変わるための儀式かのような、凛とした空気の中、窓の外には深々と雪が降りつもっていた。
私は手鏡を渡して、一緒に覗き込んだ。
「――――――綺麗。」
「これ、あたし………?」
「リンファは強くなった。そして綺麗なの。だから、もっと求めていい……全部全部、我慢しなくていいんだよ………。」
リンファを力いっぱい抱きしめる。リヴァイさんに抱く愛とは違う、けれど私の胸にあるその熱さは、確かに愛だった。
「―――――話してくれて、ありがとうリンファ。」