第22章 朋友
「―――――母親には、言えなかった。言えるはずなかった。……それから森に連れ出されるのが怖くて怖くて………女でいることを、やめたくて、そうだ……ある日、長かった髪をナイフで全部切ったんだ。……毎日耐えて、耐えて、12歳になったら、サッシュを追って訓練兵に志願できる………それまでの辛抱だって言い聞かせて、耐え抜いた――――――。」
「…………。」
「母親は、気付いてたんだ。きっと。あの時の――――――あの顔を、私は一生忘れない。」
「…………そんな………。」
「私が男に手を引かれて森に連れて行かれるとき、助けて欲しくて、気付いて欲しくて………母親を見た。母親の顔は、まるで自分の男を取られた女の、顔だった―――――――怒り、妬み、憎悪………。」
「………!」
「私が、悪いの?抗えなかった私が、無力な私が悪いの?―――――って、男の下で何度も何度も泣いたのを覚えてる。」
「悪くない!!!!!」
リンファの壮絶な過去に、私は黙っていられなかった。
大きく叫んで、リンファをまた強く抱きしめた。
「…………。」
「絶対に、絶対にリンファのせいじゃない………!」
リンファは黙ったまま、ただただ涙を流した。
ビクターさんに襲われた私を助けに来てくれた時、リンファからとてつもない怒りの感情が放たれるのを感じた。
きっと、あの時のリンファには、私が11歳の頃の自分と重なって見えていたのかもしれない。