第22章 朋友
リンファの家庭は複雑だったようだ。元々黒髪に黄色い肌を持つ人種は珍しく、リンファはまさにそんな珍しさを凝縮したような美しさを持っている。
切れ長で涼やかな目元に、艶やかな長い黒髪。母親にそっくりだとリンファは言う。父親のことは知らないらしい。
「11の時かな………母親が『父親になる人だ』と言って男を連れてきた。優しくて、いつもニコニコとした顔で私を見てた。―――――そう、いつも、いつも、いつも……見てた。」
その言葉に私はゾクッとした。まさか――――――
「私はそれなりに男になついてた。優しかったし、何より母親を安心させたかった。―――――あの日、あの男に手を引かれ、森に入ったんだ。狩りを、教えてやるって言われて。だんだんと、森の奥深くに進むにつれて、私は嫌な予感がした。動物を探している素振りなんてなくて………」
リンファが肩をすくめて少し震える。私はその肩をしっかりと抱きしめた。話そうと、してくれている。嫌な過去と、決別しようとしている。戦友として友達として、何があっても私はそれを受け止める。
「あいつは、歪んだ顔で振り返って――――――私を―――――――。」
血を吐くような声。
怖かっただろう、苦しかっただろう。
想像するだけで吐き気がする。
たかが11歳の女の子が、大人の男にどうやって抗えただろう。私はただ涙をこぼしながらリンファを抱きしめた。