第251章 〈After atory〉紲 ※
“はっ!まさかてめぇが親父になるとはなァ!!”
ケニーの野郎のイラつく声が、聞こえた気がした。
人の親になどなれねぇと、俺自身もそう思っていた。
だがなケニー。
ナナって女はそんなこともお構いなしに俺を変えていくような女なんだ。
――――厄介で、勝手で我儘で……俺を愛していて……俺を創っていく……そんな女だ。
どんなに残酷な世界でも共にいれば悪くねぇと、美しいと思える。
生まれて初めて腕に抱いた小さく柔い守るべき命に、俺は囁いた。
「――――……この世界も、悪くねぇぞ?」
歓迎の言葉に応えるように、その小さな手が一生懸命に俺の指を、ぎゅ、と掴んだ。
なんて小せぇ手かと驚く。
体はふにゃふにゃで、一つ間違えば死ぬような弱い生き物だ。それを…母親ってやつは、腹の中で十月十日も育てて、激痛の末にこの世に産んでくれるのか。
「――――………母さん………。」
あなたも俺をこうして抱いたのか。
愛おしいと、思ったのだろうか。
「ねぇリヴァイさん!私も……抱っこ、したい!!」
「ああ、待て。」
エイルが赤子を抱きたいと言って聞かねぇから、ナナのベッドの傍らにエイルを座らせてその腕に抱かせてやると、エイルはぽろりと涙を零した。
「どうしたエイル。」
「――――嬉しい。もっともっと、家族になれるね、私たち。」
「――――………。」
エイルの言葉に、ナナと目を見合わせてからエイルを抱き締めた。ナナは横たわったまま、俺たちを穏やかに見つめている。
「………ナナ。」
「はい?」
「よく無事でいてくれた。」
「………はい!」
ナナの頭を撫でてやると、褒められたガキのように嬉しそうに、手に擦り寄って愛くるしく甘い笑顔を見せる。
「俺を親父にしてくれて……ありがとうな。」
「――――どういたしまして。」
「これから賑やかになるね!アッカーマン家!ねぇこの子の名前は?!名前どうする?!私決めたい!!」