第251章 〈After atory〉紲 ※
「………リヴァイ、さん………、エイル……。」
「お母さん!!お疲れさま!お、おめで、とう……っ……!」
顔色は悪い。
起き上がれもしない様子だ。
――――でも確かにナナは笑って、そこにいてくれた。抱きついていたエイルを優しく撫でながら、ナナは俺を見上げて言った。
「――――ふふ……お揃いになると思ったんですけど……せっかちさん、でしたね。」
「あぁ……。」
「抱っこしてあげて?あなた……。」
ナナの言葉に合わせて、助産師が清潔な布に大事にくるまれた小さすぎるその命を俺の腕に託した。
力強く体を震わせて泣く赤子を腕に抱いて、何とも言えない感情がまた、次々に俺の中に芽吹いた。
「――――……。」
何と言葉をかけていいのかもわからず、ただ戸惑う。
抱いてやってもまったく泣き止まないことにもまた戸惑う。
「いいんですよ、最初は……泣くことで呼吸を覚えているんですから。」
「そう、なのか……。」
ナナが慈愛に満ちた母親の顔で、くすくすと笑う。
エイルは俺の腕の中の赤子を、心底愛おしいという顔で見つめている。
「お母さんのお腹の中がよっぽど居心地がよかったのかな?出て来たくなかった?」
泣き続ける赤子の頬をふに、と指先でつつきながら、エイルが柔く笑う。
『俺は人の親にはなれねぇよ。』
ケニーの言葉が頭をよぎった。
不器用で愛情の示し方もわからないまま、殺す技術を叩きこんで俺を育てた人物。それが正しかったのかは誰にもわからねぇが、あいつなりの愛情は確かにあったと、今ならそう思える。
――――だから俺は今、こうして腕に抱いた自分の子を愛おしいと、思っているのだろう。