第251章 〈After atory〉紲 ※
自分が家族を持つなど、想像もしていなかった。
だが今の俺は、この愛おしい存在たちがいなくなることのほうが想像がつかない。
――――人は変わる。
気持ちも、価値観も、愛し方も、志も……時代も、なにもかも。
ナナが言った『変化こそ、唯一の永遠』。
エルヴィンの思想を色濃く継いでいるのであろうそれを少しだけ理解しそうになった悔しさも否めねぇが――――……悪くねぇ。
ナナとエイルと赤子が並んで眠る病室の窓から、細い三日月がこちらを見ている。
「――――てめぇにできることは、俺にもできるんだよ。ザマァミロ。」
あいつへの宣戦布告のようにちらりと舌を出して言い捨てると、いつもの余裕の笑みを零しながらあいつが言った声が、聞こえた気がした。
“――――妬けるな”
お前が成しえなかった分まで……ナナのことも、お前の愛娘も、俺が守ってやる。
そこから見てろよ。悔しがってな。
“お前がいてくれて、良かった”
「―――――俺もそう、思う。」
それを最後に、エルヴィンの声聞こえることはなくなった。安心しやがったのか、ようやくナナを諦めやがったかは知らねぇが。
――――俺の生きる意味が、守るべきものがこの手の中に在る。
――――家族。
俺の人生に無縁だと思っていたもの。
それを手に入れてしまって、正直俺は動揺している。
だがそんなことを言えばお前はまた柔らかにふにゃ、と頬を綻ばせて……
『ねぇリヴァイさん?幸せだねぇ?』
そう言って、最高に幸せそうな顔で笑うんだろう?
―――――なぁ、ナナ。
〈After atory〉紲 ~Fin~