第251章 〈After atory〉紲 ※
「それにそれに!!すごくない?!私たち三人おそろいになるかもしれないよ?!」
「………ああ。」
「嬉しいな、うちに赤ちゃんが来てくれる……最高のプレゼントだ……!」
「――――お前は嫌じゃないのか。」
あまりに無邪気にエイルが喜ぶから……俺はその真意を確かめたかった。こいつは……年端もいかないくせに、周りのことをよく見すぎてる。
精神が大人すぎるんだ。
――――自分がどう振る舞えば俺やナナが一番喜ぶのかを考えて振る舞う、そんな奴だ。
「え………?」
「――――赤子がいればナナは手をとられる。それも……俺の子だ。お前の父親はもういないのに、これから生まれる子は両親のもとで育つ。それが……疎ましいと思うことも自然な感情だと思うが。」
最近のエイルにはもはや小賢しい言い回しなど通用しない。
エイルの心の奥に小さなひずみがあるのならそれをちゃんと理解したいと核心をついた質問を投げかけると、エイルはほんの少しだけ本心をのぞかせた。
「――――ひどいなぁ、いいお姉ちゃんになるよ、私。」
へらっと笑うその顔も、ナナにそっくりだ。
「………リヴァイさんがずっと、私のことも大事にしてくれたらね?」
エイルは小さな手で、俺の手をきゅ、と握った。
精一杯の甘えなのだろう。
「――――当たり前だ。お前は世界で一番大事な幼女だと言ったろ。血が繋がっていなくてもお前は大事な俺の、娘だ。」
「………うん!」
それからしばらくして、ばん、とドアが開いた音がした。
俺とエイルは病室へと走った。
扉を開ける前から、小さく、だが生命力に溢れた……赤子の泣き声が聞こえた。初めてこの世界で声を上げた、その声は何かに抗うように力強くて……俺とエイルは歓喜の表情で顔を見合わせて、部屋の中へ歩を進めた。
俺は何よりも、我が子がどうのよりも……ナナが無事か。それが気がかりでならなかった。ナナの姿を目で探して……ベッドに横たわるナナを見つけた時、全身の力が抜けていくような心地だった。