第251章 〈After atory〉紲 ※
巣ごもりのように寝室に籠り続けてもう3日が経とうとしていた。
むくりと体を起こすと、乱れに乱れたシーツの海の中でリヴァイさんが熟睡している。いつも私が少しでも動くと起きてまた腕に閉じ込めてしまうのに……さすがにぐっすり眠っているみたいだ。
その可愛くて愛しい人の髪をさらりと指先で撫でて、頬にキスをする。リヴァイさんの顔の傷を指でなぞって……これまでのことに想いを馳せる。
たくさんの命を犠牲にしながら……なんとかこの今を手に入れた。
――――こんなにも、幸せな時間を。
幸せが大きくなればなるほど、心のどこかで犠牲になった人々へ向けて心が痛むことも否めない。
――――救えなかった命が集まって夢枕に立って、私の体を押しつぶすみたいに口々に『生きたかったのに』『なぜ』『死にたくない』『お前もこっちに来い』と言葉を発して……私はそれにただただごめんなさいと言い続ける、そんな夢をまだ見ることがある。
息ができなくなるかと思ったその時、私を救い上げて抱きしめてくれるのは決まってこの手だ。リヴァイさんの手をとって、欠いた指を包み込むようにそっと手を握る。
「――――……あなたはいつだって私を救い上げてくれる……。」
パラディ島の港から船を出すあの瞬間、馬で駆けても間に合わないと諦めかけたその時に、満身創痍の体にも関わらず諦めずに手を伸ばしてくれた。……指を欠いた、この手を。
リヴァイさんがこんな体になっても軍に時折出向いて助言をする仕事を辞めないのは、調査兵団のその先がどうなっていくのか気になるのもあるだろうけれど、私のせいでもある。