第251章 〈After atory〉紲 ※
「――――美味しい……!」
「ああ、悪くねぇな。」
「カシスのソースが、とっても美味しいです!」
「油入れなくてよかったろ。」
「ふふ、はい……。私は料理は習ったことだけやろうと心に決めました。」
「そうしろ。」
スープもパンもとても美味しくて、いつもより食が進む。
なんて嬉しい、幸せな時間だろうと味わいと共に幸せまでも噛みしめながら、ゆっくりと食事をとった。
2人で話すのは懐かしい仲間の思い出や、調査兵団のこと……そして今連合大使として大役を担っている、元104期の子たちのこと。アーチさんのこと。
そして……エイルの成長。
リヴァイさんの口から不自然なほどエルヴィンの話だけが、出てこなかった。
懐かしいワインが喉を通ると……あの夜のことが思い出されて……どうにも辛い表情をしてしまいそうで、それをごまかすために私はいい勢いでワインを飲んだ。
「おいナナ、今日はやけによく飲むな。大丈夫か?」
「はぃ?」
やがてリヴァイさんが眉を寄せて私に問いかけてきて、初めてゆらゆらと視界が揺れたり、楽しい気持ちになっていることに気付いた。
「―――――酔ってんな………。残していい。無理して飲むな。そのワインが……どうかしたのか?」
「なんでもないですよ?美味しいから、つい!」
「お前の嘘はバレバレなんだよ。」
「………だって、リヴァイさんの前で悲しい顔、しちゃいけない………」
「―――――あ?」
「あ!ねぇリヴァイさん、ザクロ食べちゃおうかなぁ!綺麗ですね!」
二人とも食事を終えて、あとはワインやフルーツをつまもうか、という時、宝石のような実がこぼれるザクロに手を伸ばした。
その手にリヴァイさんが手を重ねてきて、私がザクロをとるよりも早く、手中に収めてしまった。