第251章 〈After atory〉紲 ※
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私の30回目の誕生日。
まさかリヴァイさんと2人きりで、こうして食卓を囲んで祝ってもらえるなんて。
2人で試行錯誤して作ったディナーは決して豪勢というわけではない。でも、とってもとっても美味しそうで、2人で作ったという事実が嬉しい。
鶏の肝臓をソテーにカシスで作ったソースとマッシュしたジャガイモを添えたものがメインディッシュだ。それにトマトベースの野菜がたくさん入ったスープ。……リヴァイさんがこっそり人参を入れないように避けていたことは気付いてないふりをしてあげている。
朝、市場で焼き上げられたパンと、色とりどりのフルーツ。
そして……懐かしいあの、ワイン。
「わぁ……!すごい、ご馳走ですね!」
「そうか?まぁ……自分たちで作ったにしては上出来と思っておくか。」
「ふふっ、嬉しい!早く食べましょう?」
「ああ、ワインを開けるか。」
「はい!」
リヴァイさんがワインのコルクを抜いてくれて、華奢な脚がついたワイングラスにとぷとぷと赤い液体が注がれていく。それを私は、じっと見ていた。
そのラベルを見れば、胸がぎゅっと押しつぶされそうになる。
今度はリヴァイさんから瓶を受け取ってリヴァイさんのグラスに注ぎ入れる。リヴァイさんがグラスを掲げて、私の誕生日を祝う言葉をくれた。
「誕生日おめでとう、ナナ。」
「ありがとうございます。」
悲しい顔は今、相応しくない。
このディナーに相応しく笑顔で返事をした。
目の前でリヴァイさんが、メインディッシュを美しい所作でナイフで切り分け口に運んだ。私も同じように初めて自分たちで調理したそれを切り分ける。ぐつぐつと黒っぽくなるまで煮込んだカシスのソースをとろりと絡めて、口に運んだ。