第251章 〈After atory〉紲 ※
夕暮れ時、扉がノックされる音がした。
「え、誰だろう?はーい。」
ナナがあまりにも無防備に出迎えようとしやがるから、それを制止する。
「俺が出る。お前はここにいろ。無防備に外に出るんじゃねぇ。」
「……過保護。」
「うるせぇ、お前もエイルも変質者に目をつけられる才能が溢れすぎなんだよ。案じてる俺の身にもなれ。」
「……はぁい。」
ナナは唇を尖らせながら何か反論したげだ。昔からよく『私がふっかけたわけじゃない』と言い訳してやがったからな。ふっかけてなくても引き寄せてんだよ、と言ったところで……本当はナナもエイルもなにも悪くない、明らかに悪いのはよからぬことを企む輩のほうだというのはわかってはいるが。
それでももう少し危機感を持ってほしいものだとため息をつきながら玄関に向かう。
―――――それにこれは俺があらかじめ手配していた、ナナは見られたくない使いだからな。
受け取った荷物を別の部屋に一旦隠してキッチンへ戻ると、ナナがなにやら思いついた!と目を輝かせて俺の方へ寄ってくる。
「ねぇリヴァイさん!果実店のご主人がおまけしてくれたカシスで、鶏の肝臓を焼いたものにソースを作ってみませんか?」
「カシスで?」
「はい!色も綺麗ですし……ここにお酢はないけど、近しい酸味があるカシスなら代わりになるかもって!」
「………なるほどな。」
「やってみます?」
「ああ。」
「わぁ!じゃあ……カシスを潰して、なんだろう……お砂糖とか油とか混ぜてみます?」
「――――待て待て、なんでいきなり生のカシスに油を混ぜる発想が出てくんだよ……とんでもねぇもんが出来るだろうが……落ち着け。」
「失礼ですね、落ち着いてますよ。」
「お前俺よりも散々いい飯を食ってきたはずだろ。」
「………食べたことはあっても、作ったことはないもん……。」
ナナは指を遊ばせながら拗ねたように頬を赤らめる。とにかくナナにも弱点があるということがわかった。教えたことは忠実にできる奴だが、料理を生み出すセンスは微塵もねぇってことだ。
「俺が指示する。ナナ、お前は手を動かせ。」
「はいっ!」
こうしてなんとかナナの誕生日を祝うディナーの準備が整った。