第251章 〈After atory〉紲 ※
ナナが見つめているのは――――ワインだ。
ナナは引き寄せられるようにその酒屋に入って、店先のよく目につくところに置かれていた一本のワインを迷うことなく手にとった。
―――――とても、大事そうに。
まるでそのワインに面影を、想い出を探すように……切ない慕情を露わにした女の顔だ。
何年経っても……まだこんな顔をさせやがる。
―――――なぁそこから見てるのか?
ナナの心の隅にいつまでもしつこく居続ける気だな、エルヴィンよ。
「よさそうなワインだな。今夜の晩酌に買えばいい。」
ナナにその手元のワイン買え、と促すと、ナナはハッとしたように眉を下げて首を横に振った。
「い、いえ……っ、いいんです、それに……リヴァイさんはワインじゃなくて――――」
「お前の誕生日だ。」
「でも………。」
「―――――お前が好むものを、俺も知りたい。」
「―――――………。」
「好きなのか?それが。」
「―――――………はい、大好き、です……。」
「なら晩酌はそれに決まりだ。」
ナナは嬉しそうに、だがどこか困惑したような複雑な表情のままそのワインの瓶を大事そうに胸に抱いた。