第251章 〈After atory〉紲 ※
「ナナ、出かけるか。体調はどうだ。」
「はい!とっても良いです。よく眠れたおかげです、きっと。」
「ああ、昨日はうなされることもなく涎垂らして寝てやがったからな。」
「………垂らしてないですっ……!た、たぶん……。」
「………ほら、行くぞ。」
朝食を済ませてすぐ、まだ太陽の光が青白く感じるような時間。馬に跨って2人で街を目指す。
こうして二人で馬に相乗りするのも久しぶりで、胸が弾む。
森の凛と澄んだ空気の中、木々の隙間から零れ出る光を浴びるように馬を走らせる。虫の声、葉が揺れる音、風が通り過ぎる音。露の匂いと土の匂い、そして太陽の匂い。
「――――綺麗ですね、リヴァイさん。」
「ああ。」
「ずっとこんな自然の豊かなところに住んでたら、病も治っちゃいそうです。」
「本当にそうなら即引っ越す。」
「あはは!リヴァイさんの行動力と決断力はさすが兵士長、ですね!」
私が笑うと、背中から私を抱く腕にリヴァイさんが少し力を込める。こっちを向け、ということだ。素直に応じると、私のこめかみに彼は小さくキスをした。
「リヴァイさん。」
「なんだ。」
「ねぇリヴァイさん。」
「なんだ、ナナ。」
「ふふ……っ、リヴァイさん!」
「なんだ、黙らせてほしいのか?」
ふざけながら、リヴァイさんを何度も呼んでみる。
だって呼びたい。
ここにいて、私の旦那さまとして私を抱いてるって何度感じても込み上げる嬉しさは底を尽かない。でもあまりやりすぎると反撃されてしまうから、この辺でやめておこう。
怖いからなぁ、私の旦那さまは。
「嬉しい。側にいてくれて、ありがとう。」
「―――――当たり前のことだ。」
「―――――うん。」
一分一秒も無駄にしたくない。
あなたといるこの時間を。