第251章 〈After atory〉紲 ※
「――――温かいな……。」
さらりと前髪を撫でるように指でなぞると嬉しそうにふふ、とはにかんだように口角を上げてまた俺にすり寄ってくる。
そんなナナを愛しく思えば思うほど、この日々が幸せであればあるほど、失うことが怖くなる。
――――ナナが悪夢にうなされて飛び起きるのと同じように、俺の中に時折フラッシュバックするのは……ナナが血を吐いて倒れたあの列車の中のことだ。
今でも鮮明に思い出しては、体が震える。
怖いんだ。
俺は――――何よりも、ナナを失うことだけが。
わかっていたはずだったが何度もこうして頭をよぎるたびに思い知る。
いつまで側にある?
この温もりは。
――――そんなことを考えないように、強くナナの体を抱いて目を閉じた。