第251章 〈After atory〉紲 ※
月が見える庭で、紅茶をすすりながら長い時間、俺たちは色んな話をした。ナナが月明かりの下で嬉しそうに話すその横顔を見つめながら口に運ぶ紅茶はいつもより香味も甘みも増して感じる。
――――酒なんかなくても、俺を酔わせてしまう。
「――――もう随分月も傾いた。寝るか、ナナ。」
「っ……はい……。」
寝るか、と呟いて立ち上がると、まるで新婚初夜の生娘かのような素振りを見せる。
「嫌ならなにもしねぇよ。怖がるな。」
ふっと息を吐いてナナの頭をぽんぽんと撫でると、ナナは俺を見上げながら大きく首を横に振った。
「……違うんです、嫌とかじゃ……ない………!」
「――――そうか。」
「はい…………。」
嫌ではないといいつつも、いつもの調子で子猫が甘えるようにその手にすり寄ってはこない。ナナの中で何らかの葛藤があるのはわかりきっていて、無理に抱くなんてことはしたくない。
「今日は疲れただろう。よく干した布団でゆっくり寝るといい。」
「………でも、リヴァイさん………。」
「――――ただし体温は貸せよ。」
頬をすりすりと撫でると、ナナは驚いた顔をしてからふにゃ、と笑う。
「――――貸すもなにも……あなたのものです……。」
「――――あぁそうだな。」
小さくキスをして、その夜はナナを腕に抱いて眠りについた。
――――我慢してねぇと言えば嘘になるが、腕の中で安心しきった顔でうなされることもなく深く眠るナナを見ればそれだけで心の内が潤っていく。