第251章 〈After atory〉紲 ※
日が暮れてナナと狭いキッチンに立ち飯の準備をして、ささやかな食事を2人で食べる。この近辺には市場もなにもねぇから……今日のところはロイが用意してくれていた食材を簡単に調理して済ませる。
「豪勢な飯じゃなくて悪いな。」
「全然?とても美味しいです。それに……リヴァイさんと食べるなら、パンの一切れだってご馳走です。」
いつになくナナが甘えたことを言いやがる。
あぁクソ、可愛い。
いつもは抜けてるところはあれど一応 “母” として気を張ってんだろう。
俺はナナが飯を食う様子を見ていた。
それこそ調査兵団にいた時の……多くの兵士を失って心を削られていたあの日々に比べればまだマシだが、それにしても食う量が少ない。最近ではエイルのほうがよく食ってるくらいだ。
「――――明日は朝から市場に行って食料を調達しねぇとな。」
「嬉しい!トロスト区以外の市場ってあまり行ったことないです!」
「食材は嫌ほど明日調達する。だから好きなだけ食え。」
「そんなにたくさんは食べられないですが……楽しみです。何か教えてください、新しいお料理。」
ナナが食事の手を止めて、目を輝かせて俺のほうをじっと見つめている。
「別にそんなに料理は得意じゃねぇぞ。」
「でも私よりできるじゃないですか。」
「そりゃそうだ。」
「ひどい。」
「お前が言ったんだろ。」
「ふふっ。」
ナナはご機嫌な顔で笑っていた。
はずだったのに……急にふと、フォークを持つ手が止まって一点を見つめながら眉を下げて切なそうな目をした。
「――――……ナナ?どうした?」
俺が気付いたことにわずかに動揺して、ハッとしたようにその場を取り繕いながら不器用な笑顔を俺に向けてくる。
そして『なんでもない』を装うように、大きく口を開けて軽く焦げ目のついたベーコンを口に運んだ。もぐもぐと咀嚼しながら、大きな瞳を上に向けて話し出す。