第251章 〈After atory〉紲 ※
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少し疲れの色を見せたナナを休ませながら、まだもう少し整えてしまいたい作業に没頭する。せっかくのレンガ造りの壁。日陰且つ地面から近い部分は湿気でもあがってくるのだろう、薄く緑のコケが蒸している。それを取り払ってレンガを磨けば……エイルに贈るに相応しい家になるだろうと腕まくりをしてさっそくとりかかる。
しばらく作業をしてふとナナの方を見ると、柔らかで清らかな微笑をたたえて俺をじっと見ている。
「……なんだ、じろじろ見やがって。」
「――――だって好きなんです。」
「…………。」
「幸せなんです。あなたを見てるのが。」
――――― ナナはよく『幸せだ』と言う。
エイルを抱き締めた時。
美味いものを食べた時。
3人で出かけて笑い合った時。
美しい星空を見上げた時。
色とりどりの花々に出会った時。
そして俺の腕の中で甘く蕩けた顔をする時。
どんな時もその言葉を紡ぐナナの唇は美しく動く。だが、まさかこんな庭仕事をしている時にまで『幸せだ』と言うのは多少大袈裟じゃねぇか?と首を傾げてみる。
「変な奴だな。」
「そうですか?リヴァイさんは今……幸せじゃないですか?」
ナナがさっきよりももっと柔く笑う。
まるで花が咲いたように。
その顔を見れば…… ナナが言うことの意味を理解できた。
「――――いや、幸せだな……確かに。」
「ふふ、でしょう?あ、あちこち綺麗にするのはいいですが、門のところの野ばらは抜かないでくださいね?喧嘩になっちゃうから!」
「馬鹿野郎、抜かねぇよ。根に持ちやがって。」
「あはは!」