第251章 〈After atory〉紲 ※
素敵な贈り物の数々を大事に片付け、そこから私たちの “なんでもない最高の一日” を始めるべく、私たちは家の中や庭を隅々まで掃除した。
バケツに組んだ水で雑巾をすすぎ、ぎゅっと絞って窓を拭く。こんな可愛らしい家だから……ピカピカにしなくちゃと意気込んで雑巾をぱんぱんと叩くと、横からリヴァイさんがひょい、と私の手から雑巾を奪い取った。
「もう、なんですか?」
「…………相変わらず腕力がねぇな。」
「そういうリヴァイさんだって指のこともあるからきっと―――――」
満足に絞れないでしょう?
と言いかけた私の目の前で、まるですすぎたてのようにぼとぼとと雫を絞り出された私の雑巾。リヴァイさんが大人げなくふん、と私を見下ろしてくる。
「――――指が、なんだって?」
「………やっぱりすごい、リヴァイさんは!」
ふふ、と笑って雑巾を受け取ると、リヴァイさんは屈んで私の額に軽くキスをする。雑巾を絞った手では私に触らないところは相変わらず徹底していて、彼らしい。
掃き掃除に拭き掃除、庭の雑草を抜いて……くたびれかけの木の柵を直す。私たちは日が傾いて沈むまでずっと手を動かしていた。
「――――ふぅ、少し休憩……かな。」
私が額の汗を拭って庭の白く可愛らしいガーデンチェアに腰かけると、リヴァイさんは咎めるどころか休んでろ、と言葉をかけてくれる。
「座ってろ。根を詰めすぎるなよ。」
「ふふ、はい。」
私はリヴァイさんがあらゆる場所を隅々まで綺麗に整えていくのを見ていた。
―――――幸せだ。
なんでだろう、甘い言葉を言われるだとか、抱き合うだとか……そういうことじゃないのに、とても……満たされている。
――――何かに、似てるな……。なんだろう。
「―――――あ。」
「あ?なんだ、どうした。」
「いえっ………なんでも、ないです。」
何かに似てる。
そう、しっくりくるそれを頭に描いたのだけれど、言ってしまえばリヴァイさんは拗ねるか……なんだか厭らしい雰囲気に持っていかれてしまいそうだから黙っていることにした。