第251章 〈After atory〉紲 ※
「……ふふっ、ですよね。でも……嬉しいな。お化粧品……持ってないから……。」
「お前はこれ以上魅力的になりようがねぇだろ。」
慣れないお化粧品に心を躍らせながらそれらを見つめる私の横で、リヴァイさんが平坦なテンションでとんでもなく甘い言葉を言うから驚いた。
「えっ。」
「化粧なんぞしなくてもお前はいつでも美しい。笑顔も、寝顔も、寝起きも。」
「えっ、ど、どうしたんですか……?」
「もともと美しいのに更に化粧なんて覚えちまったらまた余計な虫が寄って―――――」
「リヴァイさん?!」
私は耳まで熱を持ってしまって、思わず両手でリヴァイさんの口を塞いだ。
「な、なにか変なものでも食べました……?!」
「んん“?」
「あっごめんなさい……」
封じていた手を放すと、リヴァイさんが目を細めて私の心の奥まで刺さりそうな視線を向けてくる。
「――――照れてる顔はどちらかというと、綺麗よりも可愛いと思う。」
「リヴァイさん?!やっぱり変なもの食べ―――――、吐いて!早く吐かないと!!」
変なキノコでも食べたのか、はたまたエルヴィンでも乗り移っちゃったのか……とにかくリヴァイさんが変だ……!
そう思って私は思わずリヴァイさんの背中をさすった。
けれどその腕をがしっと掴まれて、呆れた声色で窘められる。
――――その声はもう、低く艶がかかっていた。
「妻のことを心のままに褒めただけだろ。誰が変だ。」
「だって……!こんな昼間からそんな甘いこと言うのは……!」
「――――エルヴィンみたいだ、って?」
「!!」
「――――エルヴィンにできることは俺にだってできる。」
「張り合うものでもないと思いますけど……。」
とにかくどうしちゃったんだろう。キスしたり抱き合ったり……体を重ねている時には『可愛い』って言ってくれることもあるけれど、素面で通常運転の場合のリヴァイさんは……『察しろ』とか、『言わせるな』とか……むしろ『馬鹿野郎』をよく言うのに。
でもそれが照れているからだってわかるから私は……結局なにを言われたとしても嬉しいんだけど。