第251章 〈After atory〉紲 ※
3人は座れそうなソファにリヴァイさんが腰かけ、私はなにも考えずにいつものようにほんの少し距離を置いて隣に座る。するとリヴァイさんがなぜか私のほうをじっと見ている。
その視線に気付いて首を傾げて問うと、リヴァイさんはほんの少し拗ねたような口調で答えた。
「――――なにか?」
「…………2人きりだ。」
「………!」
もっと側に寄れって言ってる。
あぁそうか、今は母でいる必要はない。
誰の目もはばからずに、まるで2人で巣箱に暮らしていた時のような……あなたの体温を感じられる距離でいていいんだと、そしてそれをあなたも望んでいると思うと嬉しくなる。
私はそっとリヴァイさんとの間の数十センチを埋めるように、側に寄った。
「――――開けるんだろ、プレゼント。悪いが俺からは何もねぇぞ。帰ったら仕立て屋に行く予定はしているが。」
「ふふ、そんなのいいのに。こうやってリヴァイさんと過ごす時間がなによりのプレゼントだから。」
そう言いながらネイビーのリボンがかけられた小さな箱を手にとった。しゅるりと紐を解いて上質な紙でできた丈夫な小箱をかぱ、と開けると、中から出てきたのは……最近王都の女性の間で流行っているという噂のメイク用品ブランドのアイパレットと口紅だ。
そこにもカードが挟まっていた。
「――――“お誕生日おめでとう、ナナ。そろそろお化粧を覚えてもいい歳だわ。もっと魅力的になって、リヴァイさんをしっかり捕まえておきなさいね。 クロエ”………お母様ったら……。」
「いらねぇ世話だな。」
リヴァイさんを捕まえておけ、なんてことが書いてあったからか、リヴァイさんがふん、と鼻を鳴らした。