第251章 〈After atory〉紲 ※
「ハネムーンって言うんですよ?これ。」
「ハネムーン?ってなんだ。」
「新婚のうちに行く旅行のことです。蜜月とも言って、仲睦まじい間柄の人と過ごすことを指すんですよ。」
「――――蜜月…………エロいな。」
「エロくないです。」
「諦めろ、どうせエロい空気になる。」
「――――あっ、こら!」
リヴァイさんの手が、私の腰を抱き寄せ、スカートの裾から手を忍ばせようとする。外だとはいえ、御者の人もいるのに……!とその手を払って “だめ” と、唇を尖らせて怒ってるという表情をリヴァイさんに向けてみる。
けれどそんな抵抗もむなしく、リヴァイさんははっ、と軽く笑い飛ばして私に甘い甘いキスをする。
「―――――くそ可愛い。」
「……ん、む……。」
「今日から五日間は、俺だけのナナだ。」
――――結局寝るどころか、何度も何度も甘いキスを贈られては体も心も蕩けるような心地で、眠ってはいなくても外の景色を楽しむ暇も余裕もないまま馬車は走り続けた。
そして太陽が高く昇って、まさに日が燦燦と降り注ぐ昼中に馬車は止まった。
馬車の扉が開いた瞬間吹き込んできた風から、若い緑の匂いと水辺の匂い、そしてせせらぎの音が聞こえてきた。
「――――着いた。ナナ。来い。」
先に降りて手を差し伸べてくれたリヴァイさんの手をとる。
ドキドキしながら降り立ったそこは、緑豊かな木々の合間から降り注ぐ木漏れ日と、その中に控えめに佇む一軒の小さな家。
花々が咲き誇る小さな庭があって……白いアーチ状の門には野ばらだろうか、白く小さな花がついた植物が這っていて、その花の蜜を求めて蝶が躍るように舞っている。
野ばらのトンネルの先には、白いレンガ造りに真っ赤な屋根の……おとぎ話の絵本に出て来そうな小さな家が佇んでいる。
「わぁ……!素敵……!」