第251章 〈After atory〉紲 ※
「――――何をそんなに嬉しそうな顔してんだ?」
「えっ、だってどこに行くんだろうって。」
「……何も聞かされずに人けのないところに連れて来られて危機感というものはねぇのか。」
揺れる馬車の中で、向かいに座ったリヴァイさんが腕を組みながら少し呆れたように言った。何を問うのか、この人は。
「あるわけないじゃないですか。だってリヴァイさんと一緒なんですよ?」
「―――……俺は昔ほどもう力もねぇってのにか?」
「……ふふ、そういう意味じゃないんです。」
「あ??」
「――――根拠なく、何も怖くないって……思うんです。あなたといれば。」
「……そうかよ。」
「そうです。」
私が笑うと、リヴァイさんはまた少し呆れたようにふっと息を吐く。でもその表情は柔らかくて……片目しか機能していないその目に、焼き付けるように私を見つめてくれる。
一度窓の外に目をやったリヴァイさんは、私の隣に席を映して自らの腿をぽんぽんと叩いた。
「??なんですか??」
「寝ろ。」
「えっ。」
「まだもう少しかかる。寝てろ。膝枕、してやってもいい。」
「いや別に眠たくないので……」
「寝ろ。」
「なんで?」
「………どこに行くか、見えねぇほうが……いいだろ。」
―――――あぁ、楽しみを倍増させるために、外の景色を見るなと言いたいのだろうか。
リヴァイさんは私を喜ばせようと何かを企んでいるんだ。
「やだ。」
どうしても悪戯なことを言いたくなる。
これはきっと……私もロイと同じようにリヴァイさんに甘えているんだ。
困らせたくなる。
もっと知りたい。
もっと探したいの。
まだ見たことのない、平和な毎日の中で見つける新しいリヴァイさんを。