第251章 〈After atory〉紲 ※
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「じゃあね、エイル。おばあちゃんやロイおじさん、エミリーおばさんの言うことをちゃんと聞いてね?」
「はぁい!!」
「じゃあロイ、ごめんね。エイルをよろしくね。」
「任せといてよ。」
五日間はオーウェンズ家にお世話になることになった。
正直五日間なんて私の方が寂しくなっちゃうなぁと名残惜しくエイルを見つめても、エイルは一度も振り返らずに屋敷の中へと駆けて行った。
「……たくましく育ったな。」
「……はい、本当に。」
屋敷の門まで迎えに来てくれたロイは嬉しそうに駆けていくエイルをデレデレの笑顔で見守っていた。そして途端に冷めた顔でリヴァイさんの方に向きなおして近付くと、こそっと耳打ちをしながら何かを手渡した。
「――――貸し1こだからね。」
「あ?利害の一致だろ。貸しもクソもあるか。」
「あ、そんなこと言うなら僕たちも羽を伸ばしにそっちに――――」
「本当にやめろ。」
何かよくわからないやり取りをしているけれど、私はそれが嬉しくて。ロイは相変わらずリヴァイさんに生意気な口を聞くのだけれど、エルヴィンへの甘え方とはまた違う……彼なりのリヴァイさんへの甘え方なんだってわかる。
そしてそれを面倒臭そうにしつつもちゃんと受け止めてくれるリヴァイさんだから、こんなやりとりがとても微笑ましい。エイルを送り届けて私たちは帰路につく。何事もなく列車でトロスト区の家まで帰る……と思っていたのだけれど。
「リヴァイさん……?駅はあっちですよ?」
「こっちに用がある。」
リヴァイさんは王都の道を私の手を引いて、どうにも駅とは真逆の方向へと歩いていく。
「えっ、迷子ですか?」
「んなわけあるか。」
「………?」
リヴァイさんは用がある、とだけ言って具体的には何も教えてくれないまま、私の手を引いてそのまま馬車に乗り込んだ。きょろきょろと窓から辺りを見回すと、どうやら街のはずれへと向かっているようだ。
馬車はどんどんと人気のない森の中へと入っていく。
なんだか、よくわからなすぎて逆にわくわくしてきている自分がいる。