第251章 〈After atory〉紲 ※
「―――――あ。」
「なんだ。」
「たわし。」
「は?」
「キッチンの掃除用のたわしがもうくたびれてきちゃったので、それが欲しいです。」
「買えよ普通に。」
「えぇ。リヴァイさんがほしいもの聞いたんじゃないですか。」
「とはいえまさか誕生日にたわしをねだる女はいねぇだろうが。」
「えっ、じゃあリヴァイさんは何をねだってほしかったんですか?私に?」
「………そりゃお前………」
欲しいもの聞かれたから答えたのに、と少し不満を呈して膨れながらもう一度質問の意味を問い返してみると、リヴァイさんは何かを言いかけて黙った。
「………リヴァイさん?」
「………なんだろうな。別に絶対これと言うわけじゃねぇが……服とかか。」
「服??」
「お前は着るものに無頓着なところがあるだろう。何を着ても似合ってるのも事実だが……これを機に質の良いワンピースでも仕立てるのはどうだ。」
確かに私は着るものにあまりこだわりはない。ただ洗いやすくて、清潔でシンプルで動きやすければいい。
リヴァイさんが服を仕立ててくれる……それはとっても嬉しいけれど、なんだろう。なぜか意地の悪いことを言ってみたくなる。
「――――そういえば、聞いたことがあります。」
「なにをだ。」
「男性が女性に洋服を贈るのは、脱がしたいからだって。」
ちらりとリヴァイさんを横目で小さく咎めるように見つめてみる。もちろんその……脱がされるのも悪く、ないから……嫌だとかじゃないんだけど。
……ふと昔、エルヴィンが私に最高級のシルクで仕立てられたネグリジェを贈ってくれたことを思い出す。
エルヴィンは……着せて脱がす、ではなく着せたまま味わう人だった……。
そんなことを思い出していることを悟られてはいけないと、ふるふると小さく頭を振ってから再びリヴァイさんに目をやると、なにやら私の言葉を考え込んでいるような様子だ。