第250章 〈After story〉花
「――――おい、今度はお前が妬いてんのか?」
目でも潤んでいたのか、リヴァイさんがエイルを抱いたまま、ふは、と小さく笑いながら私の髪をさらりと撫でる。
「そんなわけ、な―――――」
そう言いかけて、思った。
私だって我儘を言いたい。
リヴァイさんにとっての一番は私がいい。
そんな、母にあるまじき幼い嫉妬心が間違いなく私の胸には大きく在って……、それを押し込めて “良き母” のふりをするのはやめたんだと、私は唇を尖らせてリヴァイさんに我儘を言う。
「――――はい、妬いてます。私も抱っこして欲しいです。」
「ガキかよ。」
「ガキじゃないです、あなたの妻です。」
「あぁそうだったな。」
リヴァイさんはふ、と笑う。
これまで過ごした数か月で……調査兵団にいた頃の数年よりも何倍も何倍もリヴァイさんの笑顔が増えた。眉間の皺も目の下の陰りも、少し薄くなった気がする。
リヴァイさんが、家族でいることに喜びを感じてくれているんだってわかる。
――――それがたまらなく、嬉しい。
「ほら来い、ナナ。」
リヴァイさんが左手を私に向けて差し出した。
本当に抱っこしてくれるつもりなのか……でもさすがにそれは無理じゃないかと、くすくすと笑いながら冗談だと諭す。
「えっ、でも両腕に2人も抱けないでしょう?冗談ですよ。」
「馬鹿言え。元人類最強を舐めんじゃねぇ、余裕だ。」
そう言うと本当にがばっと、私のことも抱き上げた。
「わっ!」
「わぁ、リヴァイさんすごい力もち!!」
エイルがきゃっきゃとはしゃぎ、私は自分で言ってみたものの本当にエイルと同列で抱っこされるとなんだかとても恥ずかしくなる。