第250章 〈After story〉花
「は……、クソ可愛い。」
ぷは、とリヴァイさんが噴き出して笑って、両手を広げたエイルに応じるようにその両脇に手を差し込んで、青空に向けて抱き上げる。
太陽を背に、きゃあっ!と嬉しそうに、楽しそうに弾けんばかりに笑顔のエイルが……とても眩しくて、嬉しくて……私はなぜか少し、視界が滲んだ。
エイルは満面の笑みでリヴァイさんにしがみつき、私に向かってほんの少し、ふふん、という顔をする。
――――あぁもう生意気なんだから。
でもそこが可愛い。
マーレから帰る頃には、エイルはリヴァイさんにお利口さんに敬語で話すこともなくなった。自分の感情を自分の口でちゃんと伝えるようになった。私が入院していた間の2人の様子を私は知らない。……けれど今のエイルを見ているだけで想像できる。
きっとリヴァイさんは、こうやっていつも自分の中に抑え込んでしまうエイルの声を聞きだして、叶えて……子供らしく甘やかしてくれたのだろう。
どうしてあなたは、血の繋がらない私の娘まで……こんなに愛してくれるんだろう。それはきっと……私のことを愛しているから、だけじゃない。
――――また違うかたちで彼が愛した、亡き唯一無二の戦友の面影をそこに、見ているから。
いつも側にいた仕えるべき大きな存在が残した娘。エイルに寄り添うのは彼にとってまるで当たり前かのように側にいる。
私はまた空を見上げる。
蒼天はエルヴィンの瞳のように綺麗。
その蒼を背に、同じ目の色をしたエイルがエルヴィンの唯一無二の存在であるリヴァイさんと笑いあっている。
あなたは悔しがってるのかな。
それとも……意外に今のリヴァイさんとエイルを見て、温かい気持ちで見守っているのかもしれない。