第250章 〈After story〉花
「――――言わなきゃわかんねぇぞ。お前は何を怒ってる?」
「…………。」
「ちゃんと聞いてやる。言ってみろ、お前が何を思っているのか教えてくれ。」
真剣に自分に向き合ってくれるリヴァイさんに、エイルはちらりと目線をやってから唇を尖らせて小さく呟いた。
「……カマキリ、嫌い。」
「そうか。カマキリがいたから怖かったか?」
「……お花、とりたかった……。」
「とってやろうか。」
「…………。」
エイルは頬を染めて、黙って頷いた。
リヴァイさんはふっと笑ってカモミールの花を一輪手折ると、エイルの目の前に差し出した。
「――――ほら。」
「………あり、がと……。」
望みが叶ったはずなのに、エイルはまだ難しい顔をしながらカモミールの花を受け取り、くるくると指先でそれを弄びながらまた目を逸らす。
――――あぁそうか、この子は……ヤキモチを焼いているんだ。
「……まだ膨れてるじゃねぇか。」
「…………。」
「……まぁ、いいんだが。お前は膨れてても可愛いからな。」
リヴァイさんが優しくエイルの頭を撫でて……まるで子猫でもあやすように頭から頬、顎の下とすりすりと指先でエイルを撫でていく。エイルは少しくすぐったそうで、でもたまらなく嬉しそうな感情が隠し切れない様子だ。
でも、まだ拗ねてるんだから!とでも言いたそうに、ご機嫌斜めな顔を崩さない。
「……ほら、何か気に入らないなら言っちまえ。どうした?エイル。」
じっとリヴァイさんが見つめてくるものだから、エイルも観念したように小さくその本音を吐き出した。