第250章 〈After story〉花
サッシュさんはリヴァイさんを守るため……巨人化しながらも驚異的に自我を保ち、自らの意志で脊椎を引き抜いて自死したと聞いた。巨人化してからの死は……どこにも何も跡形が残らない。まるでユミルがその寂しさのあまりにすべてを回収していってしまうように、血も骨も蒸発して……空に還ってしまう。
あなたたちの笑う声が、笑顔が、鮮やかにいつだって蘇る。
今もそこで見てくれている?私たちを。
いつかリンファが話してくれた。
サッシュさんと2人で出かけて……カモミールの花畑でとっても幸せなひと時を過ごしたって。だからきっと、2人はここに戻って来るんじゃないかなと思って、私たちはここに来た。
エイルと会わせるって、約束したもの。
ねぇ、サッシュさん。
墓石に見立てた大きめの石の側に座って、花束と紅茶とクッキーを置く。2人で楽しんでくれたらいいな。
「……アルルも一緒に笑ってるかな。」
「さぞうるせぇだろうよ。ハンジもミケも……モブリットも……皆同じところにいるんだろう。――――エルヴィンも、エレンもな。」
リヴァイさんの手は優しく、私の頭をさらりと撫でた。
「―――はい………。」
会えなくても、そこにいてくれてる。
青空を仰いでから、エイルの方に目を向ける。するとエイルは私たちから少し離れた場所で、風に揺れるカモミールに手を伸ばしては手を引っ込めて困ったような顔をしていた。
「……なんだ、エイルはなにやってんだ?」
「さぁ……どうしたんでしょう。カモミールを摘みたいけど……なにかいる、とかでしょうか?」
「ちっ……世話が焼ける。」
リヴァイさんはそう言うと、私を左手でひょい、と抱き上げてエイルの方に向かった。
……私が病に伏してから、リヴァイさんは輪をかけて過保護だ。子供みたいにすぐ私を抱き上げる。もしかしたらエイルよりも私の方が抱っこされてるかもしれない……。