第249章 〈After story〉証
――――誰かに縛られることなど、想像したこともなかった。
縛られたくないと思って生きてきた節もあるほどだ。
それなのに俺は今、柄にもなく一人の女の心臓につながる薬指に自分の分身のような指輪を贈って繋ごうとしている。そしてその女と同じ瞳の石が埋め込まれた指輪で心臓を繋がれることを、心地良いと……嬉しいと、思った。
「それではちかいのキスを!」
「しません。」
「ちぇっ。」
ナナがきっぱりとエイルに向かって言い切ったが、ここはそういう流れでそういう作法だろうと、俺は強くナナの腕を引いて腰を抱き寄せる。
「えっ」
「わ、ぁ!!」
エイルは思わず両手で顔を覆って、だが明らかに開いた指の隙間からその大きな瞳が覗いている。それを知ったうえで、ナナに覆いかぶさるようにその唇にキスをする。
「んっ!!」
さすがに舌を入れるわけにはいかねぇかと素直に唇を離すと、ナナが真っ赤になってぎゅっと拳を握りしめている。
「リ、リヴァイさ……!」
「神父の前で誓いのキスはしねぇと、様にならねぇだろうが。」
「あぁぁあ見ちゃった!!」
エイルは両手で顔を押さえてぐるぐると走り回る中、困惑したような表情で固まるナナの耳元で、ぼそりとそれを伝える。いつか宝石店の店主に聞いた石の意味が、あまりにもピッタリで……ちょうど宝石店にいた日に話途中になってしまっていたからな。
「お前の耳と指に俺の目と同じ色の石……悪くねぇ。その石の意味はな。」
「………?」
ナナがわずかに好奇心を輝かせた目を俺に向けた。