第21章 耽溺
そしてもう一つの変化が。
ハンジさんの研究室に、出入りする人が現れた。
「ハンジさん、いらっしゃいますか、ナナです。」
「あぁナナ!!どうぞ!」
研究室の扉を開くと、そこには一般兵から新兵の班に編入してもらうことになった5人のうちの1人、モブリットさんの姿があった。
大人しく理性的な彼とハンジさんの組み合わせが、なかなかに不思議で面白い。
「モブリットさん。こんばんは。」
「あぁナナさん。」
モブリットさんは会釈をしてくれた。
「ハンジさん、頼まれていた巨人の生態についての考察の一部なのですが、こちらにまとめて書いてみました。」
「おぉぉぉおお!ありがとう!!いやぁ、頼んどいてなんだけど、ナナ忙しすぎない??ちゃんと寝てる?!」
「はい、大丈夫です。元々の職業柄、研究って楽しくて。ついついやりこんでしまいますね。」
「そっか!ならいいんだけど…!!ねぇ、さっそくこれ読んでいいかな?!?!」
ハンジさんが鼻息を荒くして、私の考察文を握りしめる。
一生懸命書いてよかった。
ハンジさんは不思議な人だけど、人を魅了する誠実さがある。
モブリットさんは、ただただハンジさんが考察文に食い入る姿を見つめていた。
私は彼がここに来る意図を知りたくて、質問を投げかけた。
「……珍しいです、研究に興味を示されるなんて。巨人に興味が?」
「あぁ………いや、巨人に………というか………。」
モブリットさんはゆっくりと話してくれた。
「俺は――――――ずっと教師になるために、勉強してきたのですが………。親にそう言われたので、言われるがまま勉強をしていて、ふと、俺は何がしたくて、なぜ勉強をしているのか――――わからなくなってしまって。」
「…………。」