第249章 〈After story〉証
「リヴァイさん……?」
「なんだナナ。」
「指輪、買うの……?」
「あ?そのつもりだが……嫌か?」
「えっ、あの、嫌じゃ……ないですけど……!」
「けど、なんだよ。」
「……私には、これがあるから……。」
ナナは柔らかく笑って耳たぶのピアスと、左手の薬指に光る指輪に触れた。
「それは確かにお前が俺のものだという証だが、俺がお前のものだという証が欲しい。」
「えっ。」
「なんだ。」
ナナが今度は目を丸くして、俺を見つめる。小動物みてぇな顔をして。
「………リヴァイさん、そんなこと思ってるんですか。」
「悪いか。」
「指輪、するの?」
「そりゃそうだろ、俺はお前の夫だ。」
「――――だって……縛って、しまうことになる……」
「あ?」
ナナは嬉しそうに目を潤ませた一方で、少し気まずそうに眉を下げた。
――――あぁそうか、お前は俺を置いて逝くかもしれない未来が怖いんだな。俺が婚約指輪を贈るのを躊躇ったように……病で先立つ可能性がチラつく中で、自分が死んだ後に俺を縛ることを躊躇っているのか。
「――――もし、私が――――……」
「いらねぇ心配だ。」
「――――………。」
「言っただろう、『俺の生涯をくれてやる』と。俺は死ぬまでお前のものだ。――――お前が側にいても、いなくても。」
俺の言葉にナナは、目を潤ませたままふにゃ、と笑った。
「はい………リヴァイさん……。」
俺は一生お前しか愛せないようにすっかりお前に毒されてしまっているんだと……いい加減気付きそうなもんだが、これはナナの性分なのだろう。
ガキの頃からそうだ。
望んで欲しがってそれが叶わなかった時に傷つかないように予防線を張っているかのような、そんな姿。
俺も段々とわかるようになってきた。
俺のことに関しては慎重すぎるナナを見ていると、あぁ俺はナナにとってかけがえのない存在なのだと実感できて……また、愛おしくなる。