第249章 〈After story〉証
2人手を繋いで、ナナの歩調に合わせてゆっくりと、トロスト区の街を歩く。ドアベルを鳴らして開いたのは、豪勢な扉だ。以前よりも店構えが随分立派になっている。
「いらっしゃいませ……あぁ、リヴァイ兵士長!!それにナナさんも!!」
俺たちに目をやってすぐに入口まで迎えに飛んできた。
翼の日に俺たちに投資したことで壁の外のいくつか良質な石が採掘できる採石場の地権を手にした宝石商の店主は前よりも肥えていて……店構えの変化だけでなく、店主の体型も商売繁盛を物語っている。
「久しいな。」
「お久しぶりです。」
「あぁ……!二人とも、痛々しいですが……本当に……っ……無事で、無事で良かったです……!」
店主が涙を拭いながら俺たちの手を交互にとって、感謝を伝えるようにぎゅ、と強く握った。
「わざわざ顔を見せに来てくださったんですか!よかったら上でお茶でも……。」
「いや、今日は買い物に来た。」
「え?―――――あ。」
ナナが照れたように左手の薬指にはめたブラックダイヤモンドの指輪を店主に見せると、店主は驚いた顔で、さっきよりもさらに暑苦しくすげぇ勢いで俺たちの手をとって重ね、ぶんぶんと力強く上下にゆすった。
「おっ、おめでとうございます!!!」
「いてぇ。」
「あっすいません!!」
「――――前に言ったな?揃いの指輪を通す時は、いいものを準備すると。」
俺がじろりと店主を見て言うと店主は慌てて手を離し、胸を張ってふん、と鼻息荒く言った。
「お任せください!!!すぐ見繕うので!!どうぞここにおかけいただいてお待ちください!!」
「ああ、頼む。」
「よろしくお願いします……。」
店主が勇み足で店の奥に消えて行って、俺はナナと2人ショーケースの前の椅子に腰かけた。
ナナは豪華になった店の内装を見回してはいるが、相変わらず欲がないというか……物欲しそうに宝石類を眺めたりすることもなく、多少の戸惑いを見せながら俺の服の裾を少し引っ張った。