第249章 〈After story〉証
「――――ナナ、大丈夫か。」
「は……い……。」
ぐったりとベッドに沈んでいる私の腹部に散った白濁を、リヴァイさんが拭いながら顔色を窺ってくれる。
そういえば……リヴァイさんは一度も、私の中で達したことがない。
そういう願望がないわけじゃないと思う。
だってかつて一度リヴァイさんがそれを口にしたことがあった。けど……その時も結局は実行せず、それからも一度も……その願望を口にすることはなかった。
――――一度、『次に孕むのは間違いなく俺の子だ』という趣旨のことを言ったのは……あれは……エイルを身ごもった時に、エルヴィンの子かリヴァイさんの子かわからず焦燥していた私の心を救うための、彼の不器用な優しさだってわかってる。
だから余計に、本当の心が知りたかった。
「――――リヴァイさん、は……自分の子孫を残したいとは、思わないの……?」
ぽつりとそれを問いかけてみると、リヴァイさんは一瞬驚いたような顔をしたけど、何かを考えるように目線を上に向けた。
「――――ガキが欲しい、と思ったことはない。が……、お前との子なら授かれば愛せる自信がある。……きっと、嬉しい。だがお前の体が万全でない以上、リスクを負ってまで産んでくれと言う気はない。」
あまりにもシンプルで分かりやすい優先順位は、リヴァイさんにとって私は本当に……何にも代えがたい存在なのだとわかってしまって……胸の奥が熱く苦しくなる。
「それに……いくら中で出したことはねぇとは言え……これだけ交わっててもガキが出来ないのは案外俺に種がない、とかなのかもしれねぇしな。それならそれでいいんじゃねぇか。」
「………それは……わかりませんが……でも………。」
「でも、なんだ?」
「――――もしリヴァイさんの子を授かったら、私は絶対に産みたいです。」
「――――………お前の命の保証ができるならな。」
「………危ういとしても、産みたい……。」
「駄目だ。」
甘く柔らかだった情事のあとの空気が、途端に切なくシリアスなものに変わる。