第21章 耽溺
エルヴィン団長は柔らかい笑みを向け、低い声で囁く。
「君は私の右腕であり、もはや欠かせない存在だ。あとはそうだな、癒しの存在としてもね。」
「……エルヴィン団長が甘く囁く時は、私を丸め込もうとしている時だって、もうわかってます。」
そう、エルヴィン団長のことも良くわかってきた。その声色の使い分け方、嘘のつき方……今のは、私のご機嫌をとろうと、たしなめる言い方だ。
「おや。手厳しいね。」
「………でも、エルヴィン団長に必要とされているなら、悪い気はしないです。右腕として、精進しますね。」
以前よりもエルヴィン団長を固く信じることができるようになったのは、少しだけ過去や、夢を追う理由を知ることができたからだろうか。
相変わらず全て見透かされそうなその瞳を長く見つめることはできないけれど、その蒼に私が映る瞬間が、心地よいと思う。