第21章 耽溺
訓練を開始して一か月が過ぎた。
色々な立場の人間が交差し、様々なトラブルもあったものの、ようやくこの毎日にも慣れてきている様子がうかがえる。
一般兵の中には、ゲルガーさんやグンタさんのように突出した身体能力を持っている人もいた。そういった人たちは、100期生の訓練に引き抜いて参加させる。
エルヴィン団長の判断だった。
「グンタ・シュルツ、ゲルガー・バランタイン、ダン・シャルロス、モブリット・バーナー……以上4名の一般兵は、今日から新兵と同じ訓練に切り替える、で宜しいですか?」
「ああ、彼らの実力はこの眼で見てきた。問題ないだろう。ぜひ、奪還作戦が終わって生き残っていたら……調査兵団に残って欲しいくらいだよ。」
「そう……ですね。」
「………何を、難しい顔をしている?」
「………自分が半年かかったことを、一か月で追い越されたことが少し……悔しくて。」
複雑な心境を吐露すると、珍しくエルヴィン団長は声を上げて笑った。
「ははははっ、何を、言うかと思えば……。性別も体格も違う。比べる事がまずおかしいとは思わないのか?」
「はい、わかってはいるのですが………調査兵団への貢献度という意味では劣っている事実が、悔しいです。」
「………何を馬鹿な事を。」