第247章 〈After atory〉虹
「――――ありがとうなアーチ。お前にも……感謝している。」
「…………!」
「紅茶淹れたよ!!リヴァイさん!!」
「あぁ、いただこう。エイル、アーチに入れた紅茶はどの茶葉だ?」
兵長が問うと、エイルはまたぱたぱたと足音を鳴らしてキッチンから深いグリーンの缶を取ってきた。そこには、白く可憐な花の模様が描かれている。
「これ!」
「あぁそうだ、それを出してやって欲しかった。よくわかったな。」
「えへへ。」
兵長に褒められるとエイルはふにゃふにゃの甘えきった顔をするのがなんとも――――可愛い。
そして俺は気付いてた。この紅茶はカモミールだ。
……けれどやっぱり少し違って、カモミールの風味なのに熟した果実香のような甘い香りがある。
「……その柄、やっぱりこれカモミールですよね?」
「ああ、マーレはそもそものカモミールの花の香りがこちらのものとは少し違うらしい。土壌の違いだろうな。それによって随分香味が違うだろう。」
「はい、なんだろう……すごく果実みたいな爽やかさと花由来の華やかさがありますね。」
「……わかったような口を……。」
「いやあんたが感想求めたんだろうが。」
「お前の好みは知らねぇが、俺は好きだったからお前に、と思って買ってきてやった。」
兵長がエイルに目配せをすると、エイルが綺麗に包装された袋を俺に差し出した。
「はい!どうぞアーチさん!」
「え………。」
茶葉にしては随分紙袋が大きいけど……と思いながら袋の中を覗き込むと、そこには茶葉ともう一つ、小さいけれど頑丈そうな木箱が入っていた。
「開けて!!開けて!!お母さんとリヴァイさんと私で相談して選んだんだよ!!」
エイルが俺の隣でぴょんぴょんと跳ねながら待ちきれない、といった表情で嬉しそうに笑っている。
「あ、ああ……。」
木箱を取り出してそっとその蓋を開けると、真っ白で薄づくりの飲み口のティ―カップが入っていた。
そのティ―カップを取り出すと、真っ白な中だがカップの胴体部分には凹凸で模様があしらわれていて、なんとも繊細で美しい陶器だ。