第247章 〈After atory〉虹
「うちの母とうちのリヴァイさんがすみません。これどうぞ。」
「――――はは、大変だね……。兵ちょ……リヴァイさんは、しばらく留守にしてた……とかなの?」
久しぶりの逢瀬ならまぁ仕方ない、わからなくもない。と2人の方へ目をやる。
「ううん。朝出かけただけ。」
「え。」
「いつもああだよ?」
「――――やばいなあの人。」
ちょっと引き気味で俺が言葉をこぼすと、エイルはとても少女には思えない冷静さで的確に兵長の心の内を読み解いた。
「リヴァイさんはきっと、この毎日が当たり前に続くって思ってないの。」
「――――………。」
「お母さんと私と過ごす毎日を……それだけ大切にしてくれてるんだよ。」
その凛として知的な横顔に、エルヴィン団長が重なる。
――――強く賢い少女だ。
「……それにね、私、嬉しいんです。」
「嬉しい?」
「――――うん。」
エイルはぴょん、とソファに飛び乗って座って、足を曲げ伸ばししながら照れたように話す。
「お母さんもリヴァイさんも、一緒にいない時は……二人とも、泣いてた。」
「泣いてた?」
「――――うん。悲しい顔ばっかりだったけど……。」
エイルはちらりとキッチンでぎゃあぎゃあとじゃれ合う二人に目をやると、ふふふ、と頬を綻ばせた。
「ここに来てからはいつも笑ってて、――――幸せそう。だから私も幸せ!!」
「―――――そっか。俺も……嬉しい。」
エイルと話して心が和やかになったところで、キッチンのほうからお湯が沸く音が聞こえてきた。
「あっ、紅茶淹れなくちゃ!」
エイルはまたぱたぱたと足音を鳴らしてキッチンの方へ駆けて行った。ようやく降ろして貰えたのか、ナナさんがエイルの手元を確認しながら紅茶を淹れるところを見守っている。