第247章 〈After atory〉虹
エイルに甘ったるい顔を見せながら部屋の中に兵長が歩を進め、ちらりと俺の方を見た。そしてクソほど不愛想に一言ぼそりと呟いた。
「―――――本当に来るとは。」
「は?!」
なんだこの野郎は本当に……!
「あんたが脅迫まがいな手紙寄越したんだろ!!」
「……飲みたきゃ来いと言ったなにが脅迫だ。遠慮ってものを知らねぇのか。」
「~~~~~~!!」
「もう、リヴァイさんったら素直に『来てくれてありがとう』って言えばいいのに。」
「――――ナナ。」
「だってね、アーチさん。リヴァイさん、マーレの茶葉のお店でカモミールの紅茶を探してて、それってアーチさんの―――――」
「ナナ。エイルとアーチの前で口を塞がれてぇのか?」
「――――あっ、クッキーあるんだったぁ。用意しなくちゃ。」
ナナさんはギクシャクと兵長を避けるように車椅子を動かした。ナナさんまで脅してるよ……そして脅し方がいちいち厭らしいんだよな……。エロ兵長は健在だってことだな。
そういやナナさんはもちろん、ナナさんが眠っている間に兵長がどれだけ乱れたかを知らない。ナナさんを失うことにビビりすぎてて半べそかいていやがったことをバラしてやろうか……!と悪戯心が沸いてくる。
そうこうしている間にもエイルが身振り手振りで今日あったことを話しているのを、やたらと幸せそうな顔で聞いている兵長を見ると……なんとなくほだされる。
俺も随分学んだ。
この人が俺に対してこういうツンケンとした態度をとるときはたいてい、照れてるか……悪ふざけしたいときだ。
いい歳したおっさんがめんどくさいけど……大人になろう、俺。