第247章 〈After atory〉虹
「………美味しいよ。とっても。」
「ほんとう?!」
感想を述べるとエイルはぱあっと太陽のような弾ける笑顔を見せてずい、と俺のほうを覗き込んでくる。
――――見れば見るほど美少女だな。
これは……兵長にとってはナナさんに加えてさらに心配事が増えて大変だろうなと想像するだけでまた、顔がにやける。
――――だけど、この子は明らかに兵長の子じゃない。
血が繋がらない、愛している女の娘にどうやって接するのか……俺には想像もつかない。と、その時ちょうど玄関の扉の鍵がガチャ、ガチャ、と二重で解かれる音がした。
『あっリヴァイさんだ!!』
母娘揃って背中をぴん、と伸ばして目を輝かせる。
エイルが一直線に玄関に走っていった。扉が開いたその瞬間、目を疑うほどの柔らかな表情をした兵長が……いつもそこに当たり前にいるのであろう、目線を下げた先の……両手を広げて、抱っこをねだるエイルに向けられた。
ふっと笑みをこぼして、宝物を抱き上げるように丁寧に、エイルを抱きあげる。
「おかえりなさい、リヴァイさん!!」
「ああ、ただいまエイル。」
エイルは兵長の首が締まるんじゃないかと思うくらい強く兵長にしがみついた。
俺は―――さっきの愚かな心配が杞憂だと知る。
――――何の心配があるっていうんだ。
血の繋がりなどなくても……この家には、確かな愛情でつながった “家族” が暮らしている。