第247章 〈After atory〉虹
「……こんにちは。アーチです。ナナさんと……リヴァイ兵長は―――――」
「アーチさん!!」
俺が言い終わる前に部屋の奥から嬉々とした声がした。透き通るような声だ。と思ったら、同時にガタン、がしゃん!と部屋の奥から色んな音がした。
「あっ、きゃあ!!」
「えっ?!だ、大丈夫ですか……?」
「もう!お母さんってば無理に動かしちゃだめ!」
扉を大きく開けたまま、少女は部屋の奥へ駆けて行った。遠慮がちに部屋の中を覗くと、車椅子に座るナナさんが……どうやら急いで車椅子を操作し、戸棚やら机やらいろんなところにぶつかったみたいだ。
「この戸棚の角は危ないぞってリヴァイさんも言ってたでしょ?」
「ご、ごめんね……!だって早く―――――」
「アーチさんなら急がなくったって逃げないよ。」
大人びた口調でナナさんを叱りつつ、母親の車いすを後ろからゆっくり押しているエイルは口でこそ強くものを言っているが、その表情はとても柔らかくて嬉しそうだ。
娘に車椅子を押されて俺の前まで来たナナさんは、俺を見上げて涙を見せた。
「―――――アーチさん……!会いたかったです……!」
「―――――俺もです。」
驚くほど素直にその言葉が出てきて、俺も驚いた。
そして当たり前のようにかがんでナナさんに目を合わせると、また……いつものように当たり前に体が動く。
俺とナナさんはぎゅ、っと抱擁を交わした。
ナナさんは小さく、震えた声で言った。
「――――リヴァイさんを支えてくれて、ありがとうアーチさん……。」
「――――ほんとですよ。あの人頑固なんで大変でしたよ。」
悪態をつくと、ナナさんがふふっと笑った。