第246章 愛 <完結>
「で?なんですか?」
「いや……いい。」
「やだ。聞きたい。」
「――――やめろ、いいって言ってんだろ。」
「やだ。だってまだ……一度も、言われたことない……。」
「…………。」
「……聞きたいなぁ。」
クソが、可愛くねだりゃ俺が逆らえないと思いやがって。改めて口に出したこともねぇ言葉が、妙にこっぱずかしい。が、仕方ねぇ。
「――――俺の、妻だ。」
目を見つめて言い切ると、ナナは自分で言わせたくせに頬を染めてふにゃ、と心底嬉しそうに笑う。
そして目線を周りにやって、エイルが少し離れたところにいることを確かめてから目を細めて……我儘な女の顔でそれをねだる。
「――――愛してるって言って。」
「――――I love you, Nana.」
「!!!」
俺が発した言葉に、ナナは目を丸くして背筋をぴん、と伸ばした。相当驚いた様子で。
「……っ知ってたの……!?」
「さぁな。」
「~~~~~!!」
ナナは困惑しきった様子でおろおろとしながら、顔を真っ赤にしている。
俺が意味を知らねぇと思って適当なことを言いやがって。
バレバレなんだよ、お前のその拙い嘘なんか。
―――だがそれでいい。
嘘なんて上手くなくていい。
―――ただその想いに素直に生きて、くるくると表情を変える色んなお前が見たい。